HACCP(ハサップ)は、食品衛生法の改正により飲食店にも義務化された衛生管理システムです。本記事では、HACCPの導入に悩む飲食店のために、その対応方法を徹底解説しています。おもなトピックスは次の3つです。HACCPの基本概念と重要性飲食店に求められる具体的な対応導入に関するQ&AHACCPに基づいた衛生管理を効果的に実施するための、当メディアおすすめの衛生検査企業も3社ご紹介します。飲食店経営者の方や、食の安全に関心のある方は、ぜひ一度ご覧ください。HACCPの正しい理解と実践が、安全な食環境づくりの第一歩となります。目次飲食店の義務化で注目!HACCPとは?引用元:photoAC2021年6月より飲食店で完全義務化が決定したHACCPとは、NASAが「アポロ計画」を実施するとき、宇宙飛行士の食の安全を守るために採用された衛生管理手法です。HACCPは、Hazard(危害)、Analysis(分析)、Critical(重要)、Control(管理)、Point(点)、5つの言葉の頭文字をとった造語で、食品が顧客に提供されるまでの各工程を継続的に管理して、食の安全を確保します。例えば、飲食店の場合、最終的に提供された料理からトラブルの原因を探るのではなく、原材料の調達から調理器具の管理、調理に至る全ての工程をチェックすることで、良質な料理を顧客に届けることが可能です。HACCP義務化の対象になる事業者HACCP義務化の対象になる事業者は、食品を扱うあらゆる事業者です。組織や事業の規模に関係なく、全ての食品事業者がHACCPシステムを採用する対象となります。ただし、一般的な飲食店のように従業員数50名未満の小規模事業者の場合は、HACCPの考え方に基づく簡略化された衛生管理のみでOKです。【HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書】飲食店におけるHACCP導入のメリット引用元:photoACHACCPの導入は飲食店にとって単なる義務ではありません。食品安全の向上だけでなく、業務効率化や顧客信頼の獲得など、さまざまな利点があります。以下では、飲食店がHACCPを導入することで得られる主なメリットを詳しく解説します。食品安全性の向上HACCPの導入により、飲食店は食品の安全性を大幅に向上させることができます。このシステムは、食品製造の全工程を通じて潜在的な危害を特定し、重要管理点を設定して継続的に監視します。従来の最終製品検査と異なり、HACCPは問題を事前に防ぐことに重点を置いています。これにより、食中毒や異物混入のリスクを大幅に低減することができます。業務効率の改善HACCPの導入プロセスは、飲食店の業務効率を改善する機会にもなります。システムの構築には、現在の作業工程を詳細に分析し、危害要因を特定する必要があります。この過程で、不要な作業や非効率な手順を発見し、改善することができます。例えば、重要管理点を明確にすることで、スタッフが効率的に作業を行えるようになります。結果として、HACCPの導入は食品安全性の向上だけでなく、業務の効率化とコスト削減にも貢献します。従業員の意識向上HACCPの導入は、飲食店の従業員の衛生意識を高める効果があります。システムの実施には、全スタッフの協力が不可欠であり、衛生管理の重要性について理解を深める機会となります。厚生労働省の調査によると、HACCPを導入した事業者の多くが「社員の衛生管理に対する意識が向上した」と回答しています。従業員が衛生管理の理由を理解し、自ら考えて行動することで、より安全な食品提供が可能になります。HACCP義務化で何をすれば良いのか?引用元:photoAC飲食店をはじめとする食品業者がHACCP義務化に伴い行うべきことは下記の3つです。衛生管理計画の策定計画に基づく実施確認・記録飲食店でHACCPの対象になるのは、原材料の入荷から調理、料理の提供までの全工程です。それらの工程全てで上述した3つを継続すればHACCPを厳守しているとみなされ、衛生環境を大きく向上できます。飲食店がHACCP義務化で求められること3つ引用元:photoAC上述したHACCP義務化で求められる3つの要素を深掘りして解説します。各要素を深く理解することで、衛生的で安心して利用できる飲食店運営を実現させましょう。衛生管理計画書の策定HACCPでは、各工程の危険分析をした上で、衛生管理計画書の策定が必要になります。HACCPに基づいた衛生管理計画書に必要なポイントが、一般衛生管理と重要管理の2つです。まず、一般衛生管理とはHACCPの基礎となる調理環境の衛生管理を表します。そして重要管理は、主に調理工程のように一般衛生管理以上に、重点的なチェックが必要なポイントのことです。2つのポイントをそれぞれリスト化したものの例が下記になります。一般衛生管理重要管理(加熱工程の場合)・従業員の入室確認・健康確認・原材料の受入・冷蔵、冷凍庫の温度確認・調理器具の洗浄・消毒確認・施設全体の点検・トイレの清掃・調理前の手洗い・非加熱・加熱・加熱と冷却を繰り返すものに食品を分類・分類ごとに調理方法や調理時間を管理・メニューごとの具体的な管理方法を確認する計画に基づく実施HACCPでは、上記の手順で作成した衛生管理計画書の内容を実施します。衛生管理計画書を作成しておくことで、リストに沿って衛生チェックをするだけでOKです。一方で、飲食店の繁盛期などで通常業務が忙しいと、リスト化した内容をチェックしながら業務を進めるのが困難になります。その際はリストチェック担当者を設けたり、こまめに衛生管理計画書を確認したりすると良いでしょう。確認・記録飲食店がHACCPに基づき衛生チェックをしたときは、必ず確認・記録するようにしましょう。万が一、飲食店で食中毒やウイルス感染のトラブルがあり、保健所が調査に入るときに、登録衛生検査所による食品検査、食品取扱者の衛生管理と合わせて衛生管理が行き届いていることの証明になります。HACCPは各工程が全てチェック対象になっているため、トラブルの原因を突き止める際、大いに役立つのも利点です。飲食店向けHACCP導入の具体的な手順引用元:photoAC飲食店でHACCPを導入する際には、具体的な手順に沿って進めることが重要です。ここでは、HACCPの7原則12手順を飲食店向けにわかりやすく解説し、効果的な導入方法を紹介します。HACCPチームの編成HACCPの導入を成功させるためには、まず適切なチームを編成することが重要です。このチームは、飲食店の各部門から代表者を選び、多角的な視点で食品安全管理を行うことができるようにします。チームのメンバーには、調理責任者、仕入れ担当者、店長などが含まれるべきです。小規模な飲食店の場合は、オーナーや店長を中心に2~3名程度のチームでも十分です。外部の専門家やコンサルタントを活用することも効果的。チーム編成後は、メンバー全員がHACCPの基本的な考え方や手順を理解するための研修を行うことが大切です。これにより、チーム全体で一貫した食品安全管理の取り組みが可能になります。製品説明書の作成次のステップは、提供する料理や飲料の詳細な製品説明書を作成することです。この説明書には、以下の情報を含める必要があります。製品名海鮮丼原材料米、マグロ、サーモン、イカ、醤油、わさび特徴生鮮魚介類を使用した冷製丼物提供方法店内での提供、テイクアウト保存方法10℃以下で保管、提供まで2時間以内消費期限調理後2時間以内対象消費者一般消費者(アレルギー表示:小麦、いか)この製品説明書は、後の工程で行う危害要因分析の基礎となるため、できるだけ詳細に作成することが重要です。アレルギー物質や保存方法など、食品安全に直結する情報は漏れなく記載するようにします。飲食店向けHACCP支援サービス引用元:photoAC飲食店がHACCPを円滑に導入し、効果的に運用するためのさまざまな支援サービスが提供されています。これらのサービスは、専門知識や経験を活かし、飲食店の衛生管理レベルの向上を支援します。コンサルティングサービスHACCPコンサルティングサービスは、飲食店がHACCPを導入する際の専門的なサポートを提供します。経験豊富なコンサルタントが、店舗の現状分析から導入計画の策定、実施までを総合的にサポートします。具体的なサービス内容には以下のようなものがあります。現場診断と改善提案HACCP計画書の作成支援従業員教育の実施衛生管理マニュアルの作成コンサルタントは、飲食店の規模や業態に合わせたカスタマイズされたアプローチを取り、効率的なHACCP導入を実現。定期的な訪問やフォローアップを通じて、継続的な改善と運用の定着をサポートします。多くのコンサルティング会社は、初回の無料相談を提供しており、飲食店はこれを活用して自店に適したサービスを選択することができます。衛生管理ソフトウェアHACCPに対応した衛生管理ソフトウェアは、飲食店の日々の衛生管理業務を効率化し、記録の管理を容易にします。これらのソフトウェアは、クラウドベースで提供されることが多く、スマートフォンやタブレットからも利用可能です。おもな機能には以下のようなものがあります。衛生チェックリストの電子化温度管理記録の自動化アレルゲン情報の管理従業員の衛生教育記録の管理多くのソフトウェアは、HACCPの要求事項に沿った記録フォーマットを提供し、必要な書類を簡単に作成できるようになっています。データの分析機能を備えているものもあり、衛生管理の傾向や問題点を視覚的に把握することができます。導入にあたっては、無料トライアル期間を設けているサービスも多いため、実際に使用してみて自店の運用に適しているかを確認することをおすすめします。従業員教育プログラムHACCPの効果的な運用には、従業員全員の理解と協力が不可欠です。従業員教育プログラムは、衛生管理の基礎知識からHACCPの具体的な実践方法まで、体系的に学ぶ機会を提供します。一般的な教育プログラムの内容は以下の通りです。食品衛生の基礎知識HACCPの概要と重要性衛生的な作業手順の実践記録の取り方と重要性これらのプログラムは、オンラインコースや集合研修、実地トレーニングなど、さまざまな形式で提供されています。多くの場合、修了証や認定証が発行され、従業員のモチベーション向上にも貢献します。定期的な再教育や新人向けの入門コースなど、継続的な学習をサポートするプログラムも用意されています。これにより、店舗全体の衛生管理レベルを持続的に高めることができます。こちらの記事もよく読まれています!衛生管理を手助けする食品衛生コンサルとは?HACCP対応支援から現場の指導までを解説飲食店がHACCP義務化に対応するときのQ&A引用元:photoAC飲食店がHACCP義務化に対応するとき、疑問に思うことや不安に感じることがいくつもあるはずです。そこで代表的な質問をQ&Aとしてまとめました。HACCP導入とHACCP認証の違いは?HACCP導入は自社判断、HACCP認証は審査機関から認定されるものです。そのため地方自治体や民間審査機関からHACCP認証を受けている方が、客観的な信頼度は増します。食品衛生法では、HACCP導入、HACCP認証、どちらもHACCP対応として有効とみなされているので、より信頼性を重視したい方はHACCP認証を受けるのがおすすめです。HACCPに関する有資格者の設置が必要になりますか?飲食店がHACCPを取り入れる際に、新たに有資格者を設置する必要はありません。大学で食品安全学などの単位を修得した方は、HACCP管理者資格という民間資格を取得できますが、設置の義務化はされていないのが現状です。缶詰やインスタントラーメンを販売する雑貨店は義務化の対象になりますか?全ての食品取扱業者にHACCP対応は義務化されていますが、缶詰やインスタントラーメンを販売している雑貨店のように、「公衆衛生に与える影響が少ない営業」をしている企業の場合、HACCP対応は義務化されていません。「公衆衛生に与える影響が少ない営業」については下記の一覧を参考にしましょう。食品又は添加物の輸入業食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみをする営業(ただし冷凍・冷蔵倉庫業は除く)農家・漁家が行う採取の一部と見なせる行為(出荷前の調製等)常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品の販売業器具容器包装の輸入又は販売業学校・病院等の営業以外の給食施設のうち、1 回の提供食数が20食未満の施設HACCPの基礎になる衛生管理!登録衛生検査所3社を紹介引用元:株式会社ファルコバイオシステムズ公式HP飲食店が適切に衛生管理することは、HACCPの基礎になります。衛生管理のために従業員の健康状態を把握したり、食品や調理環境の衛生状態を検査したりするのに利用したい登録衛生検査所を見ていきましょう。株式会社有研引用元:photoAC会社名株式会社有研本社所在地〒553-0001大阪府大阪市福島区海老江2-1-31 青山ビル電話番号06-6458-9555設立1927年拠点沖縄県、大阪府、北海道、宮城県。東京都、愛知県、福岡県公式サイトURLhttp://www.ariken.net/index.php株式会社有研は、臨床検査や環境検査を主な事業とする企業です。高度な分析技術を駆使し、医療機関や企業、自治体などに幅広いサービスを提供しています。特に、食品や水質の安全性検査、作業環境測定、臨床検査などの分野で豊富な実績を持ちます。最新の分析機器を導入し、迅速かつ正確な検査結果の提供に努めています。有研の強み長年の経験に基づく高度な分析技術と信頼性の高い検査サービスを提供しています。多様な検査ニーズに対応できる幅広い検査項目と柔軟なサービス体制を整えています。最新の分析機器と専門知識を持つスタッフにより、高精度な検査結果を迅速に提供します。こちらの記事もよく読まれています!衛生管理といえば株式会社有研|会社概要、サービス内容、特徴、流れ、競合まで徹底解説有研が検体検査でおすすめな理由迅速かつ正確な検体検査で、医療現場の効率化と患者様の安心をサポート。有研の先進的な検査システムが、あなたの医療機関の診断精度と業務効率を向上させます。最新の検査技術と設備豊富な経験と専門知識24時間365日の対応データ管理とセキュリティコスト効率の良いサービス医療の質向上と患者様の健康を支える有研の検体検査サービスについて、詳しくは公式サイトをご覧ください。迅速で正確な検査結果が、あなたの医療機関の診療をサポートしてくれるでしょう。株式会社ファルコバイオシステムズ引用元:photoAC会社名株式会社ファルコバイオシステムズ本社所在地〒606-8357京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町44番地3電話番号075-320-4240設立1973年6月1日拠点沖縄県、全国(北海道を除く)公式サイトURLhttps://www.falco.co.jp/株式会社ファルコバイオシステムズは、臨床検査事業を主軸とする企業です。西日本を中心に約14,000件の医療機関と取引を行い、業界トップクラスの実績を誇ります。全国51か所に拠点を持ち、生化学、血液学、病理学など幅広い分野の検査を提供しています。ICTを活用した医療情報システムの販売や、食品衛生・環境検査の受託業務も展開しています。ファルコバイオシステムズの強み全国に展開する検査ネットワークにより、どの地域でも高品質な検査データを提供します。米国臨床病理医協会認証ラボやISO15189認定を取得し、国際的な品質基準を満たしています。臨床検査、医療機器、調剤薬局と幅広く事業を展開し、医療業界の安定した需要を背景に堅実な経営を行っています。株式会社日本環境衛生研究所引用元:photoAC会社名株式会社日本環境衛生研究所本社所在地〒983-0035宮城県仙台市宮城野区日の出町3丁目7番14号電話番号022-782-1024設立2006年2月拠点全国(一部地域を除く)公式サイトURLhttps://kankyoueisei.com/株式会社日本環境衛生研究所は、環境衛生に関する総合的なサービスを提供する企業です。水質検査や食品検査、空気環境測定など、幅広い分野で検査・分析業務を行っています。環境衛生に関するコンサルティングや教育研修なども実施し、安全で快適な環境づくりに貢献しています。さらに、最新の分析技術と高度な専門知識を活用し、信頼性の高い検査結果を提供しています。日本環境衛生研究所の強み環境衛生に関する総合的なサービスを提供し、多様なニーズに対応できる体制を整えています。長年の経験と実績に基づく高度な専門知識と技術力を有しています。迅速かつ正確な検査結果の提供と、きめ細かなアフターフォローを実施しています。飲食店の適切な衛生管理に向けてHACCPを取り入れよう引用元:photoAC飲食店がHACCPを適切に取り入れられれば、衛生管理の行き届いた安全な料理を顧客に提供できます。HACCPは、飲食店が食中毒感染を防いだり、万が一のトラブル時にも原因究明しやすいメリットもあります。本記事ではHACCPを取り入れる際に活用できる、信頼性の高い検査機関も紹介しているので、飲食店をはじめ食品取扱業者の方々は、参考にしてみましょう。当メディアでは、次の記事もよく読まれています。ぜひチェックしておいてください!夏の食中毒、あなたの会社は大丈夫?衛生検査で守る健康